全身を青いプロテクタースーツで包んだ男は、二度、三度と剣を振るい、感触を確かめる。
 彼の国では最高峰と言われる硬度を持った希少材料から削り出した刀身は、魔術の付与によりうっすらと青く 輝いている。
 これによりさらなる硬度を増しており、もはや断てぬ物はなしとまで讃えられる名剣である。
 
 「珍しいな、お前ともあろうものが作戦直前まで動いているというのは」

 赤いプロテクターの戦士であり、この艦の艦長であるレンブルグがどこか面白そうに笑う。
 
 「どうにも落ち着きません。隊長もそのように見受けられますが?」

 レンブルグもまた、愛用の銃を手の中でもてあそんでいた。

 「そうだな。なにせ、今より降り立つのは地獄。偵察に出したアレも有益な情報を得る時間もなくロストした 」

 それを聞いていた三人目の男、こちらは黄色のスーツを着ていた男が嘲笑する。

 「怖いのかねぇ、貴族さんは?」

 品のない、むしろあえて下卑た嘲笑を漏らす事で挑発するように。
 青の男が気色ばむ。

 「下賎な身分には。ただ、強さだけが認められた戦士とも呼べない男には、恐怖と高揚の区別すらつかんか」
 「その強さだけでアンタと同じ場所にいる・・・って事は気品とかそのヘンがない分オレの方が強いって事だ ろ? 怯えてろ、守ってやるさ」
 「よく言った、作戦が終わり次第、決闘を申し込む。貴族に対する無礼、死をもって償え」
 「喜んでお受けいたします、貴族様? けどムリすんなよ、英雄のパパに言いつけてもいいんだぜ?」

 青い男が剣を輝かせる。込められた魔術の力を解放している時に発生する光。
 対して黄色の男も、一瞬にして何本もの投擲ナイフを指の間に挟んでいた。
 
 「フ・・・」
 「くっくっくっ・・・」

 そして互いが笑い出す。
 レンブルグも笑う。

 「かつての再現か。あの頃のお前達からすれば、今のお前達など想像もできんな」



 過去。
 実際に、彼らは互いを嫌悪していた。
 青き男は王室に出入りを許された英雄の息子。エリートとしての教育を受け決められた栄光の道を歩んできた 者。
 一方、黄色の男は貧民街で育った。飢えを覚えない日はなく、苦しみと死の中でそびえる城を見上げて育った 者。
 用意された道を堂々と歩んできた男と、泥水をすすり這い上がった男。
 出自の異なる二人だが、その強さゆえに赤の男が選んだ戦士達だった。
 その初めての作戦、出発直前で、彼らはさきほどとまったく同じやり取りをした。
 むろん、最後に笑いあう事はなく、決闘の約束だけを成立させて。
 しかし。
 初の作戦は想像を絶する激戦だった。
 こちらが得ていた情報は敵があえて流していた撹乱情報であり、逆にこちらは戦力や作戦などが筒抜けだった 。
 青の男はそれでも自分ならば為しえると己を鼓舞していたものの、事態はただ悪化の道をたどり作戦どころか 身動きすらできない状態となった。
 個人それぞれの力は申し分ない。それは黄色の男にも言える。圧倒的に不利なこの状況で、傷一つ負っていな いのが何よりの証拠。
 もはや、仲違いをしていては作戦の成功など不可能。
 
 『出立前の発言を撤回し、深い謝罪を述べる。どうか協力して欲しい。私にできる事であれば何でもしよう』

 青の男はそう判断し、黄色の男に謝罪した。
 本意ではない、あくまで作戦を成功させる為の手段として。
 貴族の誇りよりも、宰相から直々に受けた任務の成功を優先した結果の行動だった。
 無論、やすやすと応じる相手ではないだろうと思っていた。クツを舐めろといわれれば応じる覚悟もあった。
 黄色の男はそれを聞き、本当か? と何度も確認してくる。青の男は答える。貴族に二言はないと。
 その心中では、やはりと侮蔑し、誰がお前のような卑賤な輩との約定を守るものかと嘲笑していた。
 だが、彼の言葉は。

 『俺の街に孤児院を建ててくれ! いや、それが無理なら・・・子供達にだけでもいい、パンを、パンを配っ てくれ!』    
 青の男の肩を強くつかみ、何度も懇願してきた。
 黄色の男もまた、この戦況に追い詰められ必死だったのだ。
 絶対に死ねないと何度も呟いた。絶対に帰らなければならない、金を持って絶対に街に戻らなければならない と。
 黄色の男は語る。いや、吼える。
 飢えて死ぬ子供、寒さに震えて死ぬ子供、親に殺される子供、パンを盗んで殺される子供。
 そして。
 作戦は成功し、王と宰相の前にて帰還を報告する。
 凱旋には多くの実力者や高僧が集まっていた。むろん、英雄であった青の男の父も。
 帰還した彼の瞳をみた父は、三男である彼を跡継ぎとすると宣言した。長兄が跡を継ぐことが慣例である中で 、異例な事であった。
 それでも王の前で虚偽は語れない。そして異例を王もまた認めた。
 彼は、それをお受けする前に、と。黄色の男を指した。
 
 『彼は貧民街の出自であり、騎士の精神などなく、貴族の友としては論外の男』 
 
 それは周知の事実だった。
 レンブルグと青の彼には幾多の賛辞が贈られていたが、黄の彼に贈られたのは報酬としての金銭だけだった。

 『優雅さ、気品さ、礼儀など欠片もない。何もない男です』
 『・・・』

 黄色の男は何も言わない。ただ約束だけは守れと怒りをおさえた目で睨んでいる。

 『私にはたくさんの友人がおります。誰もが素晴らしい人物であります』

 凱旋式に参加していた彼の友人達を見回す。友人達もそれに微笑みを浮かべて応える。
 そして黄の男に視線を移し。

 『さて。私は作戦中、ある約束を彼といたしました。実に個人的な約束です。ちっぽけで彼の都合だけの約束 です』

 そんなものを守る必要はない、と周りの友人達からの声が響く。
 父もまた、反故にせよ、そんな男との約束など反故にしても貴族の誇りに傷はつかぬ、と。
 険悪な雰囲気であった。青の男は薄く笑い、黄の男は歯を食いしばっている。
 そんな中で違う笑みを浮かべていたのはレンブルグと・・・何かを察した王。
 そして今は行方知れずとなっている王の側近の黒髪の異邦人ムナ。

 『父上、その言葉は本当でしょうか?』

 青の男の父は深くうなずいた。
 青の男は一層、深く笑い。

 『ならば、私は今より貴族の証である当家の名を捨て、彼との約束を果たします』
 
 どよめく中、青の男は堂々と胸を張り、もっとも驚愕していた黄色の男を王の前へと連れ出し。

 『改めて紹介いたします。我が親友であり、尊敬する人物です。そして王に嘆願いたします。此度の作戦の褒 美に、私は名を改め、新たな家を構える事の許可を頂きたい』

 王は何も聞かずうなずいた。
 それは家を割り、新たな家を作り、己が初代当主となるという事。そしてそれは認められた。
 王の意と決定には誰であろうと異をはさむ事は許されない。
 そして王は二つ訪ねる。青の男の新しい家の名と、何を誇るのかを。

 『これより私の姓は親友の名を頂き。家無き子供達に屋根を、親無き子にパンを与える事を誇りにいたします 』
 
 かつてないほどの喧騒の中で、王はうなずいた。
 黄色の男は何も言わなかった。何も、言えなかった――





 「懐かしいな、ゲシュウル」
 
 青の男が剣を鞘におさめ。

 「貴族様はキザすぎんだ。国一番の笑い者貴族、ヘルツォーク=ネイサート=ゲシュウル、殿」 

 黄の男があえて、青の男のフルネームを呼ぶ。

 「私は誰に笑われても構わん。親友であるお前を誇れる今のこの人生に感謝している」
 「あーあー、うぜぇんだよ。親友とか勘弁しろ、バカか」
 「我が親友は口は悪いが、女性に語る言葉は実に優しい声だと聞き及んでいる。君と一夜を過ごしたモービリ ン嬢は嬉しそうに教えてくれた」
 「五歳のガキに嬢とか一夜を過ごしたとか言うな! 寝れねぇって言うから本を読んでやっただけだろうが!


 レンブルグは思う。このチームに不可能などない。
 それが今より降り立つ戦場であっても。
 しかし彼らは知らない。今、母星で起きている出来事を。









 ――四月も終わりに近づいた、休日明けの月曜日。
 入学して、約一ヶ月という微妙な期間がたった一年生の教室というのは、どこも似たような空気が漂っている もの。
 お互いの顔と名前が一致し始めたクラスメイト達から、気の会いそうな友人が見つかる時期で。
 当然、授業と授業の合間、10分ほどの休み時間でも話し声は尽きないのもの。
 の、はずなんですけど。

 「・・・」

 私こと相馬藍湖(ソウマ アイコ)の在籍する1年C組は、ある条件下において常に無言。
 授業中の方がまだ騒がしいというか、なんというか。

 「・・・」

 わかってはいます。
 その元凶はたった一ヶ月で、この学校を恐怖のどん底に陥れた一人の男子生徒の存在。
 
 「・・・」

 いつもは休み時間になると、フラフラとどこかへ出かけていくのに・・・。
 今日に限ってその彼は朝からずっと休み時間はお休みモード。
 私はチラリと後ろを盗み見る。
 スヤスヤと寝息を立てている彼は、サラサラの黒髪、私と同じくらい細い体、そして・・・拳ダコのある 手。
 薙峰梓、君。
 それが私の斜め後ろの席の生徒の名前。   
 今や殺人鬼とまで言われ、恐れられている危険人物。
 入学式当日の空手部襲撃事件に端を発し。
その後も二年生の女生徒に無理やり関係を迫ったり、放課後に女子剣道部員を襲ったりと。
 とにかくとんでもない鬼畜で悪党。
 三年間、絶対に目をつけられてはいけない人物。
 よってみんな、彼を間違っても起こしたりしないように不動の姿勢を保っている。
 教室を出たくても、そのわずかな足音やドアを開ける音で起こしてはいけないという事で、ここにいるしかな い。

 「・・・」

 そして、私は。
 ピンチです。
 
 「・・・ぅ」

 トイレに行きたいです、トイレに行きたいです、トイレに行きぃぃぅぅ・・・うっ・・・行きたいです。 
 もちろん、全員が携帯の電源は切っています。 
 しかし危険地帯A範囲に設定されている、私を含めた彼の周り九人の生徒には、さらに。
 『絶対に物音を立てるな!』とか、『立つな、動くな、喋るな』とか、『目指せ無我の境地、達せよ明鏡止水 』などなど。
 皆が、ノートに殴り書きしたメッセージを掲げています。
 いつもはコソコソと話している加藤君と鈴木さんですらそれに従って無言。事の重大さを物語っています。
 けれど、私は。
 ピンチです。ピンチです。ピン・・・ッチです!
 ・・・おそらく。
 ココで粗相をしてしまっても、イジメられたりはしないでしょう。
 むしろ、よく恥に耐えて頑張ったと称えられるかもしれませんが、そんな栄誉は絶対にイヤです。
 これくらいの・・・ふぅッ・・・あっ、んッ!

  
 


11/『晴れ、ときどき爆発、ところにより変態』






 結局。
 私は授業中に手をあげて、トイレにいかせてもらう事にしまして、事なきを得たわけですが。
 この授業が終われば昼食タイムです。体育もあったため、お腹が減っています。あ、いえ、私は見学でし たけど。
 よってこの後、もし薙峰君が眠ってしまうようですと我々1−C組の全員がお昼抜きになります、切ないです
悲しいです・・・。
 そして、授業終了。
 起立、例、着席、そしてこっそりと後ろを盗み見ると・・・あ、寝ちゃいそう。うー。
 と。
 皆がまた空腹を抱えて、無言と緊張の時間に突入しようとした瞬間。

 「ごぎげんよう、後輩諸君! そして頭が高い! ひかえおろー!」

 先生と入れ替わるようにして入って来たのは、先輩の女生徒。
 その人は、この学校の二年生では最も有名な春日桜さんでした。
 春日先輩は固まったままの私達の席を縫うようにして、こちらへ一直線。目的はもちろん薙峰君だろうけ ど・・・
 みんなが、春日先輩の声で薙峰君が起きないかと不安になって凝視していたのも一瞬。

 「お、寝てるし。ついにやってきたこの解禁日に、なんともノンビリ屋さんだ」

 薙峰君の横に立った瞬間。

 「うっふん、ダーリン。お・き・て?」

 などと、とんでもない事を彼の耳ともで囁いた。
 声は小さかったものの、この教室が静かすぎるため、妙に響く。
 自身もそれに驚いたのか、手を振って。 

 「な、なんちゃって。ほらほら、起きて、起きて!!」
 「・・・」

 殺人鬼の頭がゆっくりとあがっていく。まさにホラー映画。
 そして不機嫌そうに薄く開かれていた目が・・・春日先輩を見た瞬間、カッと開かれた。
 ・・・ついに死人が出るかと、私はイスから飛び上がり避難しようとした瞬間。

 「さ、屋上行くよー!」

 薙峰君が立ち上がるより先に、その手をひっぱって走り出す。
 と、教室を出る途中、窓際で。

 「お、この前はサンクスだったね、はい、名誉後輩賞授与ー」

 ポンと、確か・・・そう、高野君。
 春日先輩は持っていたパックジュース(いちご牛乳)を彼に手渡し、走り去・・・らず、また足を止めて。

 「あ、そうだ。キミ、今からダッシュで校舎裏にツラ出しなさい。友達にキミのコト話したら会って話をしたいんだってさー。ナマしちゃダメよ?」
 「さー、わかりましたー、さー」
 「うむ。よろしい。キミはホントにナイス後輩だなぁ」 
 
 今度こそ教室から去っていった。
 すぐさま反応したのは加藤君と鈴木さん。高野君の机に詰め寄り、知り合いなのか、もしかして春日先輩にち ょっかい出したのか、ヤバイくないか? などなど。
 確かに春日先輩って美人というか、かわいい系の美少女だし、雰囲気も明るくて魅力的だから男の子ならひか れると思う。
 でも、薙峰君の肉奴・・・こほん、薙峰君と関係の深いあの先輩に手を出すのは自殺行為だと誰でも知ってる から、たまたま何かで話した程度じゃないかな?
 ・・・と。
 私も今日はのんびりはしていられない。
 お弁当を忘れたぽややんな姉が、中庭で私を待っているのでした。





 私は二人分の昼食のサンドイッチが入ったランチボックスを持って中庭のベンチへ急ぐ。
 中庭にはいくつかのベンチがあり、一番校舎から離れている青いベンチに姉の姿はあった。
 というより、中庭には姉一人のみ。確かに今日はちょっと寒いし、風も強いからそれも不思議じゃない。
 私は、遅れてしまったと走りよるも。

 「・・・すー・・・すー・・・」

 と、穏やかな寝息を立てて、お休みモード。
 ゆるいカーブのかかったフワフワの長い髪と、あどけない童顔とぽっちゃりとした桜色の唇。
 あいかわらず美人。背もスラッと高く、胸もおっきいし。ほんと、おっきいし。

 「・・・くー・・・くー・・・」

 春とは言え、まだちょっと外で寝てしまうには、ちょっと早い時期。
 私は、もう一度周りに人がいないのを確認して、制服の上を脱いで姉にかけた。
 起こすのも忍びないし、隣に座ってお目覚めを待つ。
 そんな姉の名前は、相馬歌恋(ソウマ カレン)。なかなかカッコイイ名前です。
 私はランチボックスを開いて、とりあえず自分だけ昼食開始。
 と。
 二つ目のサンドイッチに手を出そうとした時。


 パンッ・・・


 「?」
  
 どこからか爆発音? のようなものが聞こえたような? まさか、ガス爆発とか? 
 高いところから響いたような気が・・・などと不安に思っていると。


 ドンッ!! 


 「!」

 それは明らかに校舎の方から鳴り響く爆発音! 見れば校舎の屋上から土煙が舞い上がってる!
 さらに、爆音が違う場所からも響く。多分・・・校舎裏の辺り! あわわわ!
 私はすぐさま隣でまだ安らかな笑顔を浮かべている姉、歌恋ちゃんを揺り起こす。

 「んー・・・もう食べられないよー?」

 なんてベタな。それにまだ食べてないよ?
 仕方なく私は歌恋ちゃんを背負い・・・えーと。
 どこへ避難したらいいんだろうと、考えて、再び歌恋ちゃんをベンチに戻した。
 こういう場合グラウンドとかに非難するんだろうし、わざわざ校舎の中に戻る方が危ないはず。
 私はどうしたものかと、周りを見渡すしかなく。

 「う、うーん、と・・・」

 結局、立ち尽くしたまま。だって、こんな事は初めてであって。
 ただただ、どうすればいいか、わからない。
 神様、どうすればいいですか?
 などと。
 空を見上げたのがいけなかった。
 
 「あ」

 太陽も高いというのに、流れ星がひとつ輝いたと思ったら。


 ドンッッッッ!!


 「きゃ!!」

 すぐそこにある、中庭中央の噴水が爆発!
 土煙とガレキと大量の水と爆音が辺りに撒き散らされる。
 そして、その全てがおさまった後。
 噴水があった場所には青いヘルメットをかぶり、同色のタイツを着た男の人が立っていた・・・って、どなた ?
 その人は、奇妙な格好で珍妙なポーズをとっていたものの。 
 
 「・・・ふむ? 艦長、いやレッドと収束位置がズレた、か」

 屋上の土煙を確認すると直立姿勢になり、腕につけていた、やたらと大きい時計に向かって。

 「副艦長へ。こちらブルー。予測誤差圏外の場所に不時着、すぐにレッドと合流を・・・なに!?」

 ・・・不時・・・着?
 私は全壊してもなお、けなげに水を噴き上げる、あ、今止まった、今まで頑張っていた噴水の亡がらを見 つつも、男の挙動に注意を払う。
 
 「すでに戦闘状態? 相手は・・・目標であったカテゴリーM、それも仲間が!? イエローは? イエローも別の何かと交戦中!?」
 
 慌てふためくブルータイツ。
 私としては、様々な観察結果から。

 「・・・」

 歌恋ちゃんを再び背負い、この危険地帯から脱出をこころみる。
 明らかに関わってはいけない事象だというコトは私でなくとも確信する、この場所、この瞬間、この状況 。
 物音を立てず、そろそろと歩き出す。

 「・・・」

 そして、ふと気づけば目の前には空き缶が。
 ほら。よくある光景。刑事ドラマとかで事件を目撃した人が、缶を蹴っちゃって見つかるみたいな。
 もちろん私はそんなミスはしない。注意深く缶をスルーします。
 と。

 「もうー、食べられなーい」

 背中から響く歌恋ちゃんの寝言・・・。
 
 「・・・」

 私は、おそるおそる振り返る。

 「・・・」
 「・・・」

 ブルータイツ、めっちゃコッチ見てる。

 「・・・」
 「・・・」

 まだ見てる。

 「・・・」
 「・・・」

 ・・・。

 「あわわわわわわ!!」

 その緊張感に耐えられず、私は大声をあげながら走り出す!
 
 「ま、待ちなさい少女よ!?」

 追いかけてくるブルータイツ!
 私は歌恋ちゃんを背負ったまま、ひたすら走り続ける。

 「待つんだ! 私は宇宙の平和を守るためにこの星に降り立った戦士の一人であり、この星にやってきたのは 新たな仲間を探すためであり、待ちなさい、話を聞きなさい!!」

 なんか言ってる! 電波だ、電波が追いかけてくる!! 
 
 「そうだ、君ももしや、そういった力を持っているのか!? この星の、特にムナ殿の故郷であるこの島には 戦士が溢れていると情報がある! 少し体を調べさせてくれないか!」
 「いやぁー!!」

 電波で変態! デンジャー上乗せ!! ピンチです、ピンチです、ピンチです! 
 私はただ全力でまっすぐ走る。中庭を抜けたその先には校門。
 このまま学校を出で警察に駆け込むべきか? それともうまく変態をかわして校舎内へ滑り込むか?
 ・・・しかし、あの変態をかわせなければ、私の人生はバッドエンド間違いなし。
 うう、ならばやっぱり校外へ行くしかない! と、たどり着いた校門前。
 
 「!?」

 そこには二人の女性が、校門の前で何かしら話し込んでいた。
 一人は着物姿の少女で、なぜか手には大きなギターケースを持っている。
 もう一人は・・・メイドさん。なんなんだろうか、この二人?
 と、普段ならば首をかしげるところだけど、今はそれどころじゃない。

 「そ、そこの二人、危ないから入っちゃダメです!!」

 と、今にも校内へ一歩を踏み出そうとしていた二人の足が止まる。

 「危ない、ですか?」
 「危ないだって?」

 二人は顔を見合わせて、首をかしげている。
 
 「見えないですか? 屋上とか中庭とかの煙! そ、それに、私の後ろに、ってああああ!!」

 もうすぐそこまで迫っていたブルータイツ。

 「む? さらに二人の女性が? 君達! 君達は戦士か?」

 ついに私は変態に追いつかれた。まったく関係のない見知らぬ二人を巻き添えにしつつ・・・。
 などと絶望と悲嘆にくれているというのに。

 「都会の学園というものは、実に風変わりですね、真王寺様」
 「ああ、私も田舎者だからわかんないけどな。屋上で火を焚いたり、そこの男みたいな仮装をしたりする事は なかったな」  

 物珍しそうに笑う二人。

 「さ、まずは君だ。何、痛みなどはない。接触型センサで全身を透視させてもらうだけだ」

 変態が私の手をつかむ。

 「や、やめてください!」

 私が悲鳴をあげて。
 ようやく二人の表情が曇る。

 「真王寺様。その、もしかして、これは普段の光景ではないのでは?」
 「なんかそうみたいだな。じゃあ火事なのか? で、君は・・・もしかして襲われてるのか?」
 「・・・もしかして? ・・・襲われているのか? ・・・ですって?」

 私は。
 
 「・・・そんなの」
 
 キレました。

 「そんなの・・・ッ! 見てわからないんですか!!」

 もう怒りながら、泣きながら、叫びました。
 噴水は壊れるし、その中から人が突然現れるし、しかもブルータイツで変態で。
 逃げようとがんばっていたら、ノンキすぎる二人組に出会うし。
 不幸。
 そう、今までの人生、決して幸せばかりじゃなかったけれど、今、この瞬間こそ、確実に今まで人生でワース トワンの瞬間。
 なのに、もしかして? 襲われているのか? キレてますよ、ええ、キレてますよ!

 「そ、そうでしたか。申し訳ありません」
 
 深く頭を下げる着物姿の少女は。
 抱いていたギターケースを開き・・・白い刀を取り出した。

 「お詫びというわけではございませんが・・・その賊、討ってさしあげます」

 違うからね! ギターケース、それ入れるものと違うからね!

 「ほう? 咲夜は剣士だったか。しかし実戦で直刀とは珍しいな」
 「幼い頃より側においてきた大切な友です。無銘ではありますが・・・花子と呼んでおります」

 どこからかリィンと音が響く。気のせいか嬉しそうな響きの音だった。

 「あー、あるね。やっぱ女の子だからね。あたしも実家にある愛用の薙刀とかには名前つけたりしたなぁ」
 「ふふふ。そうですよね。咲夜だけが夢見がち、という事ではないですよね?」
 「ああ。女の子なら名前をつけてかわいがるのがフツーさ。手入れの熱も入るってもんだ」

 ぬいぐるみの話をしてる・・・わけではないですよね? なのに、なんで空気がフルーティーなの? 

 「けど、ここは神聖な学び舎だし刃傷沙汰はマズい。ここはあたしにまかせてくれるか?」
 「あ・・・そうですね。・・・それではお願いいたします、これ、花子、わがままは駄目ですよ」

 今度はどこか悲しそうなリィンという音。
 そして代わりにメイドの女性が一歩前へ進み出る。

 「おい、そこの青いの」
 「・・・む? 私の事か?」
 「とりあえずその子を離せ」
 
 てっきり忘れていたものの、私は自分の状況を思い出し、あわてて手を振りほどく。
 そして、こちらもある意味危なそうではあるものの、雰囲気的に私を助けてくれているというのはわかる ので、メイドさんの方へ逃げこむ。

 「待ちなさい。貴女は何か誤解をしている。私はこの星に戦士を探しに来たのだ」
 「・・・なんだお前? 宇宙人だってか?」
 「宇宙人。ふむ、確かに君から見ればそうだろう。私の名前は明かせないが、目的はこの宇宙の全てに平和を もたらす為にやってきたのだ」
 「ほう?」
 「この星。特にこの小さな島には戦士が多いと調査結果が出ている。ゆえに一人でも多く、味方にするべくや ってきたのだ」
 「ほーう?」
 「君はどうなのだ? 女性でも優れた戦士がいる事は事前調査でわかっているのだが?」

 その問いに対して、メイドさんは言葉で答えることなく、拳を鳴らし、首をコキコキとしながら。

 「お前が何者で。何が目的なのか。それはどうでもいい。今、わかってる事は」

 メイドさんが私を見る。
 よく見るとすごく美人。あとすごくおっきい胸。そして・・・すごく優しい瞳。

 「テメェが女を泣かす男だって事だ。未熟なれど・・・いや、未熟な身ゆえ、それだけで拳を振るう理由 には充分!」

 エプロンスカートをひるがえし、空手のような構えをとるメイドさん。

 「やはり戦士か! しかも、その澄んだ瞳。さぞ腕利きと見た。頼む、私と来てくれないか?」
 「断る!」
 「交渉は決裂か。ならば、本意ではないが、力ずくでお連れする」

 メイドさんはそれを聞いて。
 その凛々しい顔を、なぜか赤くした。

 「こ、こんな昼間から破廉恥な・・・しかも、名乗りもせず、顔をあわせた途端に、だと? 都会という所は これだから!」

 拳を固めなおすメイドさん。

 「・・・チッ、偶然とは言え教えてやる。真王寺の女が欲しいならその女に勝てばいい。要するに、真王寺ゆ かりの女に対して力ずくで連れて行くってのは・・・つまり、その・・・求婚と同意だ、このたわけ!!」
 「? つまり、私が勝てばよいのだな?」
 「ああ。あたしが欲しいなら、奪ってみせろ、力ずくでな!」
 「了解した。戦闘に入る」

 変態が何も無い空間から剣? を取り出した。またしても不可思議現象。
 なんか青い光を放った、なんというか特撮モノのヒーローが持っているような剣。

 「ほう、見事な手品だがな。肝心の腕前はどんなもんだか?」

 突き出した拳から、人差し指だけを立てて、チョイチョイと挑発するメイドさん。
 なんだか・・・美人だというのに、男らしい仕草がなんともカッコイイ。

 「来な!」
 「行くぞ!」

 もうぜんと走りこむブルータイツ、そして一気に振り下ろされる剣!
 爆音と土煙が巻き上がる!

 「む、見誤った、か? 『青の地獄』の戦士相手と言えど、これでは跡形も・・・なに!?」

 ブルータイツが慌てた一瞬の後、違う驚愕に身を固まらせる。
 そう。アスファルトの地面に大穴を空けていた剣の先には、しかし何も無かった。

 「この程度であたしが欲しい、だと?」

 いつの間にか変態の後ろに回りこんだメイドさんは、ブーツで地をえぐるように踏み込み、体を沈ませると。

 「教えてやる。真王寺の女を戯れに欲しがった男は・・・こうなる!」
 「む!?」

 メイドさんが左手でパンチを繰り出したと思った瞬間、キンッと耳が痛む。
 気圧の違うところとかでなってしまう耳鳴りのような感じ。 
 つい目を閉じた瞬間、またしても爆音。
 再び目をあければ、そこに立っていたのは肩をすくめてメイドさんのみ。
 変態は・・・?

 「口ほどにもないヤツだな」

 メイドさんの視線を追うと・・・あ、変態発見。
 校舎の壁に大の字でめり込んでいました。
 って、ここから10メートルは離れてるんですけど・・・。
 しかし。
 終わりではなかった。

 「魔術的な反応は皆無だった。装備品も布製・・・つまり、生身。くわえて素手でこの威力か。一瞬とはいえ 、このスーツが過負荷の限界近くまで迫られるとは」
 
 しっかりした足取りで、壁から出てくる変態。
 色々とあり得ない中でも、どれだけ頑丈なんだろうというくらいに元気。

 「ほう? なかなか丈夫だな。なんだ? 実は骨のあるヤツなのか?」

 メイドさんは嬉しそうに再び構えを取る。

 「さすが『青き地獄』の戦士。しかし自分もここで死ぬわけにはいかん。仕方ないが・・・任務続行の為、全 力で行く」
 「・・・全力、だと? 手加減していたとでも?」
 「無論だ。私の目的はあくまで君のような戦士を連れ帰る事。加えて女性ともなれば、負傷もさせたくないと 思っていたが・・・予想外の力だ。そうも言ってられなくなった」
 「・・・そうか、はっはっはっは」

 メイドさんがひとしきり笑って。
 
 「ナメられたもんだよな、オイ?」
 「客観的な判断による結論でしかない。いかに威力があろうとも、僅かながら君の力では私のスーツを破壊しえない。そして、いずれ私の剣が君に触れればそれで終わりだ」 

 そしてメイドさんの笑顔が消えた。

 「・・・名乗りもしないヤツに真王寺の技を見せるつもりもなかったが、気が変わった」
 「行くぞ!」

 青い剣がメイドさんに振り下ろされる。さっきよりも速い! 避けられない!?
 再び爆音・・・は起こらなかった。
 代わりに短く弾けるような音が一つ。

 「な・・・な、な!?」

 それまでとは違い、動揺を大きくあらわすブルータイツ。
 彼の手にあった青い剣。それは半ばほどから先がなくなっていた。
 そして。
 
 「危ないですよ」

 ツイ、と、着物姿の少女にそでをひかれる。
 それまで私が立っていた場所に、青い剣の先っぽがささった。

 「さっきは遊びで避けてやったがな・・・真王寺にいなす、避けるはないんだよ」
 「バカな、この剣を・・・叩き折る? バカな、ありえん、ありえん!!」

 そう。
 メイドさんは振り下ろされた剣を叩き折っていた。

 「し、真剣白刃取り?」
 「いいえ。少し違うようです。真王寺様はあの殿方の剣を左腕の手のひらで刃先を弾いて横にそらし、右拳で 剣の腹を打ちました。剣の腹は脆く、日本刀であってもあの一撃には耐えられないでしょう。西洋の剣であれば 、なおさらかと」 
 
 なんだかアッサリと解説してくれる。どんな目をしているんでしょう。
 そしてメイドさんが、静かな呼気とともに。

 「真王寺流散鋼(チリハガネ)真王寺要・・・この右拳、耐えられると思うなよ」 

 ブルータイツが砕けた剣を捨てて、両手で守りの姿勢をとる。
 再び、あの耳鳴りが響くかと思いきや。
 私の目ですらわかるほど、ゆっくりと放たれるパンチ。
 トンッと軽く、その拳がブルータイツの交差した腕に触れ。

 「散れ」

 メイドさんが立っていた場所、その足元のコンクリートがはじけ飛んだ瞬間。
 しかし、それよりも一瞬早く、ブルータイツの姿がかききえた。
 
 「・・・あれ?」

 キョトンと拳の先を鋭く見つめていたメイドさんがキョトンとする。
 私も辺りを見回すが、変態の姿はどこにもない。

 「咲夜、今のヤツは?」
 「いえ・・・その、咲夜にも、消えてしまったかのように見えましたが・・・」
 「・・・さすが都会。不可解な事ばかりだ」
 「左様ですね・・・」

 私からすると、あなた達も不可解ですけど。と口には出さず。

 「あ、あの。どうも危ないところを、ありがとうございました」

 なんとか言葉を搾り出す。
 少なくとも、この人達がいなければ私の人生には、シャレにならない人生の1ページか、もしくはエンド ロールを迎えていただろうし。

 「ん? ああ、大丈夫だったか? 背負ってる子は気を失ってるのか?」
 「あ、この人は寝てるだけで・・・」

 歌恋ちゃん、いまだ起きる気配なし。

 「へぇ。この騒ぎで寝てるなんて、よっぽどの人物なんだな」 
 「そうですね。この咲夜など肝が震える思いでしたし」

 などと妙な感心の仕方をするメイドさんと、ウソでしょとツッコミたくなるような事を言う着物少女。
 
 「さてと。なんだか変な事になったが、本来の目的を果たさないとな」
 「そうですね。あ、そちらの方にお伺いしてはどうでしょうか?」
 「それもそうだな」

 二人がうなずきあい、そして私を見る。

 「な、なんでしょうか?」
 「あー、実はあたし達な、ここの生徒の関係者で弁当を届けに来たんだ」
 「けれど、校舎に勝手に入ってよいものかと、思案していた次第でして・・・」

 ああ、なるほど。それで校門の前で二人とも立ち往生していた、というわけみたい。 

 「できたら、届けてもらってもいいか? 咲夜も今日のところはお願いしたらどうだ?」
 「そ、そうですね・・・手ずからお渡しするというのは、私にはまだ早いかもしれませんし・・・」

 まぁ、それくらいなら。
 上級生のクラスとかだとちょっと戸惑うかもしれないけど、命の恩人? のお願いでもあるし。

 「じゃあ、クラスと名前を教えてもらえますか?」
 
 私は当然の質問をしたものの。

 「そういえばクラスとか知らないな」
 「・・・恥ずかしながら咲夜も存じません・・・」 

 いや、それじゃちょっと届けようが無いかな、と。

 「名前だけで探すとなると・・・多分、お昼おわっちゃいますよ? というか、探し出せるかどうか・・・」
 「む、そうか、そうだよな」
 「そうでしょうね・・・」
 
 明らかにうなだれる二人。なんがたか自分が悪いことをしているような気にすらなる。

 「ま、仕方ない。一食くらい抜いたって死にはしないだろ」
 「で、ですが・・・」
 「咲夜の旦那も、それくらいで怒りはしないさ」
 「だ、旦那様、だなんて、そんな、咲夜はまだ、その・・・許婚、というだけで、妻と認めて頂いたわけでは ・・・」

 許婚? この時代に本当にいるんだー。
 
 「というわけで今日は諦めるとしよう。ありがとな」

 メイドさん、確か真王寺要さん、が私の肩をポンポンと叩き。

 「ご面倒おかけいたしました」

 着物少女の咲夜さんが深々と頭を下げる。

 「あ、いえ、お礼を言うのは私の方です。危ないところをありがとうございました」

 真王寺要さんはまた笑って。

 「礼を言われるほどの事じゃないさ。困ってるヤツが目の前にいたら助けるのが当然だろ?」  
 
 当然。
 その当然が希薄な現代。ああ、だからこの人の笑顔はこんなに素敵なんだな、と納得してしまう。
 これが、私と二人の出会いだった。










 私は中庭に戻り、再び歌恋ちゃんをベンチへ戻した。
 ちょうど、キーンコーンカーンコーンと昼休み終了の鐘が鳴り響く。

 「んー・・・あ、おはよぉ、藍湖ちゃん」 

 ようやく歌恋ちゃんが起きる。

 「・・・うん、おはよ、歌恋ちゃん」

 そして、スカートのポケットから折りたたまれた紙を私に差し出し。

 「はい、生徒会の入会申請書。放課後、記入したコレを持って生徒会室にきてね、よろしくー」
 「あ、うん」

 推薦人の欄には、副会長である、この歌恋ちゃんの署名が入っている。
 本来であれば、三名の二年生の推薦で、三名の一年生が入会する、らしいのだけど、二年生の一人が現在は登校していないという理由で、歌恋ちゃんが推薦人の枠に入ったらしい。流行のひきこもり?
 
 「今日はサンドイッチー。いただきますー」
 
 と言って、もそもそと食べ始める歌恋ちゃん。うん、まぁ、お昼休み終わったんだけどね。 
 私はため息を一つついて、隣に座り。
 
 「ね、生徒会の他の一年生ってもう決まってるの?」
 「まだよー。書類受諾は今日からだから、たぶん藍湖ちゃんが最初の一年生かなー」

 もくもくとサンドイッチを食べつつ。

 「ま、気楽にやればいーよー。面白おかしくテキトーにー」
 「う、うん」 

 歌恋ちゃんと同じく、あまり体が丈夫ではない私は運動系の部活動はムリ。
 中学と同じく、また文科系の何かに入ろうと思っていた所、姉の『じゃ、生徒会に入ってー』の一言。
 内申書とかの下心もちょっとはあったけど、生徒会というものに興味があったのも事実。
 何よりも、歌恋ちゃんの全てを変えたという人物に大きな興味がある。
 今、歌恋ちゃんが笑顔を浮かべて生きていられるのは、その人のおかげだと言っていた。
 確かに・・・昔の歌恋ちゃんは覇気、いえ、生気がなかったような表情しかなかった。
 けれど、あの日を境に、その人に出会って、歌恋ちゃんは笑顔を取り戻した。
 私がどれだけがんばっても、ただ薄く笑う事しかできなかった歌恋ちゃんを。
 その人は、わずかな時間で笑顔にさせた。
 それもただ笑顔じゃない。生きる意思、何かを達するという目標を持った強い笑顔。
 その人への興味は尽きない。そして、今までにはない新しい学生生活への新しい期待。
 ただ。
 私はまだ知らなかった。
 この後、すぐに全ての授業が中止となり。
 最初の生徒会の仕事という名目による、ただの片付け要員として集まった私と同じ立場の生徒会入会メン バーに。
 ・・・彼がいた事を。





11/ 『晴れ、ときどき爆発、ところにより変態』 END
next 12/ 『晴れ、ドキドキ青春、ところにより殺し合い』





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